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【開催報告】くろまぐろ遊漁規制に関する意見交換会を実施

更新日:2022年11月29日

2022年11月21日



はじめに

くろまぐろ遊漁の規制についてご存じだろうか。

2022年6月より新しい規制が適用され、日本全体でのキープ量は年間で40トンまで、またキープできるのは30kg以上の大型魚に限り、1人1日1尾までとなっている。

くろまぐろ釣りは一部の釣り人が楽しむ釣りだと思うかもしれないが、遊漁における規制はもはやひとごとではない。


2022年11月15日、東京日本橋にて「くろまぐろ遊漁規制に関する意見交換会」が開催され、

徳永兼三、村岡正憲をはじめとしたJAAのコアメンバー、プロアングラーが参加し、くろまぐろの遊漁規制について水産庁及び一般参加者と意見交換を行った。


現在、日本近海における遊漁規制の対象魚はくろまぐろのみだが、近い将来マダイやブリなど釣り人気の高い魚も規制対象となる可能性がある。

一般の釣り人も、資源管理について真剣に考えるときが来たと言える。


本レポートでは、JAAサポートスタッフの目線で、意見交換会の要所を抜粋して紹介する。

「将来にわたって釣りを楽しむためにどうすべきか」と考えるきっかけとなれば幸いである。



【開催概要】

名称:次年度くろまぐろ遊漁規制に関する一般向け意見交換会

日時:2022年11月15日(火) 14:00-15:00

場所:FinGATE KAYABA

   https://www.fingate.tokyo/

主催:一般社団法人日本アングラーズ協会 (JAA)

   https://www.jaafishing.org/


【プログラム】

挨拶及び趣旨説明

  JAA共同代表 徳永兼三、村岡昌憲

JAA設立のご案内とクロマグロ遊漁船事業者協議会の活動状況

  JAA事務局運営統括 桜井駿

今年度のクロマグロ遊漁に関する委員会指示内容と規制の運用状況

  水産庁 資源管理部管理調整課 漁場利用指導班 総合調整係長 小山藍 氏

トークセッション「クロマグロ遊漁規制の現状と今後について」

  <パネリスト>

  ・徳永兼三(JAA共同代表)

  ・村岡昌憲 (JAA共同代表)

  ・佐藤偉知郎(JAA幹事)

  ・鈴木斉(JAA幹事)

  ・柏瀬巌 氏(公益財団法人 日本釣振興会 常任理事)

  ・権藤純一 氏(水産庁資源管理部管理調整課沿岸・遊漁室 課長補佐)

 <モデレーター>

  ・桜井 駿(JAA事務局運営統括)




挨拶及び趣旨説明

はじめにJAA共同代表の徳永兼三、村岡昌憲より挨拶の言葉が述べられた。


今回の意見交換会は、くろまぐろ遊漁規制に関して釣り人と水産庁で話し合うことを目的としている。

はじめての試みであるが、闊達な意見交換を期待したい。


昨今、時代の流れとして釣り人は肩身の狭い状況にある。

これは、資源保護やマナーの問題について、釣り人がまとまって対応できておらず、世間の目が厳しくなっているというところが大きい。

今回のイベントを機に、団体や立場を垣根を超えて釣り人どうしで団結し、釣り人としての責務を果たすことで、未来にわたって楽しく釣りができる環境を作りたいと考えている。




JAA設立のご案内とクロマグロ遊漁船事業者協議会の活動状況

次に、JAA事務局運営統括の桜井駿より、JAAの設立状況やクロマグロ遊漁船協議会の活動状況が報告された。



JAAの設立

JAAは釣りという文化を発展させ、未来に残すことを目的に設立された団体。

著名なプロアングラーである徳永兼三、村岡正憲、佐藤偉知郎、鈴木斉、工藤竜児をコアメンバーとし、

一般のアングラー24名をサポートメンバーとして運営している。

イベント運営や、SNSによる情報発信、漁業団体との連携、また海外の釣り団体との連携を図っている。



クロマグロ遊漁船協議会

JAA内の組織として"クロマグロ遊漁事業者協議会"を運営している。

クロマグロ遊漁事業者協議会は、くろまぐろ遊漁の資源管理や窓口の一本化を目的としたものである。

現在は35隻の遊漁船が協議会に登録されている。

全国のくろまぐろ遊漁船の数をJAAで調査中で、概ね100隻程度あると想定している。今後は半数程度の登録を目指したい。

活動内容として水産庁との定例会議による意見交換や、くろまぐろ遊漁規制に関する提言の取りまとめを行っている。




今年度のクロマグロ遊漁に関する委員会指示内容と規制の運用状況

水産庁の小山氏より、くろまぐろ遊漁規制の運用状況が報告された。


2022年度の規制概要

2022年6月1日より新たなくろまぐろ遊漁の規制が始まった。

30kg未満の小型魚は採捕禁止、30kg以上の大型魚のキープは1人1日1尾までとなっている。

キープした場合には水産庁への報告をお願いしている。

遊漁の採捕数量の上限の目安は2022年度は全国で40トンまでと定められており、超過の可能性があれば採捕は禁止となり、キャッチ&リリースが前提であっても遊漁は全面禁止となる。

11月11日時点の報告ではキープ量は25.5トンとなっている。


また、くろまぐろ遊漁規制の今後の改善案が、JAAの鈴木斉と佐藤偉知郎より提案された。



重量計測に加えてサイズ計測も活用

採捕報告の際に、くろまぐろの全長や胴回りの長さから推定重量を報告する方式を提案したい。

30kg程度の魚の重量計測は遊漁船でも可能だが、100kg超の場合は重すぎて計測できないことが多い。

キャッチする際には内臓やエラをその場で取ってしまうことが多く、帰港してからでは重量計測ができないため、船長や釣り人の目分量で報告しているのが実態である。

船長から150kgと言われていたが、帰港して計測したところ80kg程度だったという話も聞く。

近年の資源保護、資源管理の効果もあってか、今年は各地で大型魚の釣果報告が相次いでいる。

30kg程度の魚の誤差は小さいが、100kg以上の魚の誤差はかなり大きく出てしまうため、40トンのキープ量を必要以上に減らしてしまう。

カジキの場合は全長や胴回りの長さから正確な重量を推定できるという実績もある。報告方式の改善を検討いただきたい。



キャッチ&リリースによる資源保護の拡大

キャッチ&リリースによるくろまぐろの生存率はかなり高いと推定される。

青森ではくろまぐろ遊漁の歴史が長く、キャッチ&リリースを前提としたゲームフィッシングもかなり盛んである。

また、くろまぐろ遊漁が一大産業となっている町もある。

青森でくろまぐろ釣りのハイシーズンを迎えるのは8月だが、それまでに他の地域のキャッチにより遊漁が禁止となってしまうと町の産業にも影響が出る。キャッチ&リリースの遊漁においては規制緩和をお願いしたい。



トークセッション「くろまぐろ遊漁規制の現状と今後について」


ここからはパネリストによる様々な意見交換が行われた。



釣り業界全体の団結


JAA村岡昌憲からは、資源保護の重要性が語られた。

近年は資源管理やルールの順守について、釣り人の意識も向上している。

それゆえに様々な対立が起こっているのも事実。くろまぐろ遊漁についても同様。

釣り業界全体で資源保護に協力する必要がある。

資源が回復すれば、キープ量に余裕が生まれ、対立も減ってくるはずである。

メーカー、釣り団体、一般の釣り人を含めて団結して資源保護に取り組んでいきたい。



ルール啓蒙の必要性

柏瀬氏からは、くろまぐろ遊漁規制の啓蒙について語られた。

私は5年程度くろまぐろ釣りにチャレンジしているが、いまだに1匹も釣れていない。

一方、知り合いの釣り人は、去年からくろまぐろ釣りをはじめて、既に何匹も釣り上げている。

資源の回復に伴い釣果が増えていて、これまで釣れなかった地域で釣れるようになってきた。

しかしそういった地域では、くろまぐろ遊漁規制の浸透率が低いように思われる。

今後、未来にわたってくろまぐろ釣りを楽しむためには、ルールを守ることが重要だと啓蒙する必要がある。



理解も求めながら一歩ずつ

水産庁権藤氏からは、今後漁業と同様の資源管理が遊漁分野にも徐々に適用されていく流れについて語られた。

くろまぐろ遊漁規制は、一歩ずつ課題を改善しながら運営している状況である。

今回のような意見交換により、釣り人の意見を規制に反映することもますます進むはずだ。

将来的には他魚種の遊漁も規制される可能性がある。その際には、くろまぐろ遊漁規制を手本として推進できるようにしたい。


参加者の間で3時間にもわたり議論が行われ、今回のイベントは無事終了した。


漁業も含めた資源保護の取り組みにより、くろまぐろの資源量は回復傾向にある。

ただし最盛期の水準に戻ったわけではなく、数年前の最悪な状況は脱したということに過ぎない。

また他の魚種、例えばイワシやサバ、サンマ、スルメイカなど、くろまぐろの捕食対象となる魚の資源量は依然として厳しい状況にある。

くろまぐろだけではなく、様々な魚種の資源保護に興味を持ち協力していくことが、我々釣り人にも求められている。




執筆・編集:一般社団法人日本アングラーズ協会

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